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2009年12月 2日 (水)

奄美の祭事「シバサシ」宇検村阿室集落

シバサシ 宇検村阿室

大きいノロの存在、集落の伝統行事やまとまりに不可欠

104日(旧歴816日)午前5時。宇検村阿室。まだ明けきらぬシマ(集落)では「シバサシ」が始まっていた。

八月初丙の日のアラセツから7日後の壬の日に行われる伝統行事。

シマの中央にあるミャー(祭り広場)の土俵脇に真っ赤な火が灯され、チヂン(小太鼓)と八月踊り唄が響き渡る。

「アラシャゲ」で始まり土俵を囲んで「芦検坊々ぜ」「柳葉」「キューヤ(喜界)湾泊」の4曲を東の空が明けるまで唄い、踊った。合間にはお茶、焼酎、塩、イカの干物が配られた。

阿室は30世帯67人。三方を山々に囲まれ、集落の奥まったところにわずかに畑が残る。隣りの平田集落の境にある神山にはシマタテガナシがあり、ミャーの近くには1916(大正5)年に大火で焼失した女夫松の後に植えられた松の巨木やアシャゲ、トネヤ、カミミチ、そして宿泊施設完備の公民館がある。

シバサシは節行事の一つ。

住家や家畜小屋の軒先、畑などにシバを挿すことから「柴挿し」と呼ばれる。アラセツとシバサシの日は松明を灯し、朝5時から踊りはじめ、その間の5日間は夜の8時ごろから1時間以上連日踊る。昨年までは午前4時から始まっていたという。

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シバサシギンを拝む家は前日のまだ明るいうちに高膳にミシャク、焼酎を線香3本を供える。盆に迎える先祖は線香2本。祖先とシバサシの神様では線香の数が違う。代々父系列で相続され、その家の主婦が拝む。

門口で藁束で迎え火を焚き、チカラグサでたたいて炎を消し、煙を立ててコーソガナシ(祖先の神様)を迎える。

家々の四隅にススキを挿して悪霊払いをし、シバサシギン(ハブラギンなどと呼ぶ)、カミギン(神衣)、カカン(スカート)、サジ(鉢巻のような長い布)、ドギン(胴衣)などを取り出して、五穀豊穣祈願とシバサシの神様を祀る。年に一回の伝統行事。現在は6軒の家で行われており、各家々では45枚のシバサシギンを東の方向に供えて拝む。

写真・文 山中順子

南海日日新聞10月10日掲載よりhttp://www.nankainn.com/

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同村でただ一人のノロ下村タエ子さん(82)は夫の浩朗さん(89)と二人暮らし。代々ノロを継承してきた下村家に嫁ぎ、1959年(昭和34)年に「自分や家族、集落のためになるのなら私が拝みます」とノロを継承。以来、50年にわたって集落の祭祀を司ってきた。

現在行っている祭祀は①4月初午の日に行う初ハマオレ②6月のキゼェ③8月第3日曜日の豊年祭④ミシャク=191612月の大火後から師走2日(現在は新暦の122日)に行っている大災祈願―の4つ。12日の「アシャゲ」は4年ぐらい前にやめたという

タエ子さんは「昭和22年頃はグチヌシュ(男性の神役)、アタリ(当番役)3人はカネクドゥネ(金久)、シラマドゥネ(白間)、シモドゥネ(下)から選び、ノロも5人いたよ。宮畑モトマツというすごい神様がいていろいろ教わった。昔は祭りの時、各家々が米を一合づつ持ち寄り祈願し、そのお米をノロ達が分け合った」と昔を振り返りつつ、「与えられた運命だから、体が丈夫なうちはこれからも頑張ります」と話した。

山畑キクエさん(91)は年に一度、シバサシの日にだけノロの衣装を出し、風を通す。「昔はミキやアオウルメ(アジ)の干物を用意してシバサシの神様も迎えましたよ」と話し、「今年も煙に乗って拝まれてください」とシバサシ前日の夕方、藁に火をつけて迎え、この日「トートガナシまた来年も降りてきて拝まれてください」と送りの火を藁につけ、煙とともに空に向かって見送った。7年前に夫の直三さんを亡くし、二男邦彦さん夫婦と3人で暮らす。

「シバサシノカミサマライネンモオイデクダサイ」と線香を3本立てて拝んでいるのは森山タツエさん(82)。「昔からのものだから大切にしないといけませんね」と伝統を守っている。福本千草さん(77)は「郷土研究の方々が来て調べたりしていますが、今でも何がすごいのかよく分からないね」と話しつつ、毎年シバサシの祭りを継承している。このほか、浜畑サカエさん(83)もシバサシギンを保存している。

 保枝隆雄区長(72)は「昨年シバサシギンを祀る家は7件あったが今年は6件。豊年祭や伝統行事においてノロ神様の存在は大きく、下村さん(ノロ)がいないと集落はまとまらない。阿室はユイ(助け合い)の心で団結していて、小さくても大きな集落。伝統の祭りを大切に残していきたい」と話した。

写真説明

①カミギンを供え、風を通す、今年も無事にシバサシを迎えられたことに感謝する森山タツエさん

②シバサシ高膳。線香は3本。ミキが3つあるのは祖先のノロの分とシバサシの神様用

④ドギン(胴衣)、内側は深い緑色で表側は金色。素材はシルク

⑤ドギンと巻きスカートのような紺地の紐がついたカカン

⑥芭蕉布で織られたバシャギン、とても小さい⑦帯・腰巻

⑨シバサシの朝、東に向かって供えられた高膳とシバサシギンに朝陽が射し込む=福元さん宅

⑩福元千草さん所有の琉球紅型のドギン(胴衣)

⑪シルクのように滑らかなドギン

⑫福元さんと芭蕉布で織られた一畳を上回る薄手のシバサシギン 

⑬シバサシ火。松明をともし、未明からシバサシが始まる。アラセツとシバサシの朝のみ松明がたかれる

⑭踊りに添えられる茶、焼酎、塩、イカの干物

⑮午前5時。アシャゲの前のミャーに集まり、全員で唄い、踊る

⑯シバサシの神様に感謝する山畑キクエさん。3本の線香にミキ、焼酎が供えられている

⑰「父が造ったこの家や志を残していきたい」と話す山畑邦彦さん

⑱山畑キクエさん宅。ハブラギンと呼ばれるドギン(胴衣)や芭蕉布など4点が祭られている。三角は蝶を意味し、魔除けとされる

⑲シバサシの神様を見送り、「来年もまた来てくださいね」と手を合わせるキクエさんさん

⑳集落でただ一人のノロ下村タエ子さん。祭壇にはシバサシの神とノロ神を祭り、祖先の仏壇と炊事場の水の神は別々に祭っている

21「来年のシバサシの日に、また降りてきてください」と祈願するタエ子さん

22「シバサシの神様は煙を伝ってお帰りになる」とタエ子さん。藁に火をつけ、根の付いたチカラグサで消して煙を上げる

23海沿いの雑草の中から柴(ススキ)を切り出し、自宅の四つ角や納屋にススキを挿す窪茂成さん(80)。

24 シバサシの日のトネヤ。祭りの振り出しや祈祷はここが舞台となる

25浜畑サカエさん宅のノロギン。サジと呼ばれる鉢巻のような長いヒモ、腰巻、襟なしのドギンと3点残る。線香3本、ミキ、酒の3点セットは他の方々と共通している(下)

26秋葉神社の上にある聖地シマタテガナシ

27ノロの「共同墓」。親ノロ、ノロ、グジ主が同じ墓に眠る

28集落内を走る神道

29集落が見渡せる秋葉神社の下手に火の見小屋。1966(昭和41)年建設

30秋葉神社。1916(大正5)年122日の大火の後から祭るようになった

36クミスクチンを栽培する森山利夫さん。ノロギンを祀っているタツエさんも販売を手伝う

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